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製品仕様
商品名アカギ ユニクロハヤウマ接続金具 NO.6(A122140122)
内容量1個
販売単位1個
仕様●品名:ハヤウマ6
仕様2●長穴:11×20mm
材質/仕上●スチール
原産国日本
質量311
質量単位G

当店では2014年3月31日23時59分までは、販売価格を旧税率で表示しています。
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【読書日記】ギデンズ『社会の構成』

ギデンズ, A.著,門田健一訳(2015):『社会の構成』勁草書房,461p.6,000円.

 

言わずと知れた英国の社会学者アンソニー・ギデンズの1984年の著書が30年の時を経て日本語訳された。本書の刊行は地理学者が最も待ち望んでいたといってもいいかもしれない。そう,ギデンズの構造化理論はスウェーデンの地理学者ヘーゲルストランドが開発した「時間地理学」から発想を得た社会学理論として知られているからだ。しかし,ギデンズの著書の翻訳は多かったものの,構造化理論について日本語では読むことができなかった。
私自身,大学院修士時代にエスノメソドロジーに関心を持っていたが,当時はそれこそ日本語で読める文献は少なく,1987年に翻訳の出ていた,ギデンズの『社会学の新しい方法規準』(原著は1976年)のなかでエスノメソドロジーも登場していたので,私もその頃(1990年代前半)に読んだが,さっぱりわからなかった。その後,グローバル化という概念が社会学を中心に日本でも紹介されつつある頃に,1990年の『近代とはいかなる時代か?』の翻訳が出され(1993年),これも読んだ。こちらは原著タイトルが『モダニティの帰結』となっていて,前近代と近代以降の社会の変化をわかりやすく解説していて,こちらは読みやすかった。
同じ頃に分厚い社会学の教科書『社会学』も翻訳出版されたが,それは読むことなく,日本でのギデンズ流行もひと段落したこともあり,他の著書を読むことはなかった。その後も『国民国家と暴力』や『モダニティと自己アイデンティティ』など読みたい本は出版されたがなんとなく読まずにここまで来てしまった。

第1章 構造化理論の諸原理
第2章 意識,自己,社会的出会い
第3章 時間,空間,範域化
第4章 構造,システム,社会的差異生産
第5章 変動,進化,権力
第6章 構造化理論,経験的調査,社会批判

もともと私が学問の道を進もうと思ったのは,卒業論文に向けて読み始めた書籍の面白さを知ったことだった。卒業論文はメディア研究的なものだったので,その方面の古典ももちろん面白かったが,社会学的な面白さを知ったのはシュッツの『現象学的社会学』とピーター・バーガーの『社会学への招待』だった。目先の社会問題を具体的に論じるようなものよりも,社会のしくみの本質を批判的に抽象的に論じることに面白さを感じたのだ。とはいえ,最近の学問の傾向はそうした抽象的な議論よりも具体的な議論に偏っている気がする。とはいえ,もちろん目先の問題に捕らわれているわけではなく,100年単位の時間的視野と,グローバルな空間的視野を持っているので,それはそれで非常に面白い。そんなものを読むことが多くなってしまったので,本書の読書はなかなか難しかった。読んではいるのだが,内容が頭にすっとは入ってこない。まあ,ギデンズに関しては『社会学の新しい方法規準』を読んだ時もそんな感じだったので仕方がないのだが。
ただ,これまでギデンズの構造化理論について,地理学者の議論を通じて私の頭の中で出来上がっていたものとはだいぶ違うことが分かった。やはり翻訳といえども原著を読むことの意義はここにあると思う。まず,私は勝手に,構造化理論は本書によって出来上がったと思っていたのだが,そうではなかった。1984年に出された本書の前に1981年の『史的唯物論の現代的批判』や1982年の『社会理論の輪郭と批判』という翻訳されていない著作があり,すでにそういうもののなかで作り上げられたものだということだ。本書のなかで「構造化理論」は所与のものとして登場する。そして,構造化理論は時間地理学から大きな影響を受けていると地理学者は習う。しかし,構造化理論自体が社会の主体と構造の相互作用的なことを論じているように,構造化理論と時間地理学は相互発展的に進展してきたものだと分かる。時間地理学の創始者であるヘーゲルストランドはともかく,その影響下で時間地理学を論じていたグレゴリーやプレッドなどはギデンズとのやり取りの中でお互いの議論を深めたように,本書を読むと思う。特に,本書にはかなり抽象的な図表があり,これは概念や考え方を図式化したものだが,まさにこれはグレゴリーが得意とすることであり,本書の冒頭にもそうした図式化の考えはグレゴリーから学んだ的なことが書かれている。そして,一番大きいのは地理学のなかで学ぶような,構造化理論のある程度分かりやすくて一括した説明は本書にはほとんどない。もちろん,主体と構造の二元論的理解が誤りであるということは随所で指摘はされているがその先にある一元論的解説はない。
いろいろ細かいところを説明しようとするときりがないが,この頃のギデンズの社会学はタルコット・パーソンズの社会学を批判してその先を目指していることが分かる。特に本書で私が大きく学んだのは社会進化論に対する批判だ。もちろん,ダーウィンの生物学的進化論を社会科学に援用することは科学史や思想史の分野でも根本的に批判されてきた。しかし,ギデンズはそれをもっと根源的に,現代の社会学の根底にも息づいているものとして批判している。この点については本書から40年経つ今でも今一度自省する必要があるように感じた。
今回の読書日記はこの辺りにしておきたい。機会を見つけて,ギデンズの他の作品を読み,また抽象的な社会理論に手を伸ばしていきたいと思う。

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【映画日記】『劇場版名探偵コナン』『チタン』『わが青春つきるとも』

2022年430日(土)

府中TOHOシネマズ 『劇場版名探偵コナンハロウィンの花嫁』
娘と2人で観に来ました。名探偵コナンはご存知の通り,子どもに人気はありますが,毎回のように殺人事件が起こり,トリックもそこそこ難解なので,息子は(前者の点において)好きにならずに,アニメも含めこれまで見てこなかった。コロナ前の2019年くらいだったと思うが,多摩映画祭のファミリー上映作品として,コナンとクレヨンしんちゃんを親子3人で観たのだが,その時から劇場版については観るようになり,最近では娘がコミックを中古で買うくらい。しかし,前作『緋色の弾丸』を息子はあまり気に入らなかったらしく,今回は2人で観ることに。
動画サイトも含めて,劇場版コナンは何作か観ましたが,本作はこれまでの原作&アニメで進展してきた物語の延長線上にあるということでなかなか愉しめる内容でした。とはいえ,劇場版のための演出もあり,今回の舞台は渋谷ということで,馴染みもあってよかったのかもしれません。一度もまともに渋谷に行ったことのない娘も行きたがっていました。
https://www.conan-movie.jp/

 

2022年54日(水,祝)

立川シネマシティ 『チタン』
ふと見つけたYoutube動画で作家の松田青子さんが解説していた(しかし,動画は最後まで見ていない)作品として気になっていたので,観ることにしました。ネタバレあります。幼い頃,自動車事故で頭蓋骨に金属を埋め込んだ女性の主人公。その事故の原因ともなったのが,主人公の乗用車やバイクなどへの執着。大人になってもその界隈で仕事をしていて,自動車との性行為によって胎児をはらみます。しかし,連続殺人の容疑者として追われる身となり,子どもの頃行方不明になった男性になり代わることで,とある消防団長の家に住み込むことになる。息子が疾走し,離婚をしてマッチョな男性消防員たちとのホモソーシャルな生活をする中年男性との二人暮らし。女であること,妊娠していることを隠しながらの,消防員としての生活。なんて,分かったように書くと,この作品に潜むフェミニズム的思想を分かったような気になりますが,正直私には理解不能な作品です。後でゆっくり,松田さんたちの解説を聴くことにしよう(まだ残っているかな)。
https://gaga.ne.jp/titane/

 

2022年56日(金)

ポレポレ東中野 『わが青春つきるともー伊藤千代子の生涯ー』
私は『東京民報』と『しんぶん赤旗日曜版』をとっていますが,そうすると否が応でも知ることになる作品。伊藤千代子という治安維持法によって弾圧され,24歳で獄中死した伊藤千代子(1905-1929)という人物を描く作品。日本共産党の創立が1922年ですが,映画によると当初は労働農民党の選挙の手伝いなどをしていて,その後1928年に入党したとのこと。入党間もなく検挙され,そのまま獄中生活となってしまうので,日本共産党員としての活動をそれほどしたわけではない。ということで,今日の共産党としては彼女の党員としての云々よりも,その貫かれた意志の強さから学ぶというところでしょうか。主演の井上百合子さんはなかなか魅力的な女優さんで,本作のようなお堅い作品が似合いますが,それ以外での活躍も目にしたいもの。
https://chiyoko-cinema.jp/

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【映画日記】『カモン カモン』『パリ13区』

2022年428日(木)

立川キノシネマ 『カモン カモン』
ホアキン・フェニックス主演のモノクロ映画。『人生はビギナーズ』と『20センチュリー・ウーマン』しか観ていないが,画面の雰囲気がとても好きな監督マイク・ミルズ作品。未婚の叔父と9歳の甥のひと時の共同生活というたまらない設定。このチームで面白くないわけがないですね。そして,子役のウディ・ノーマンの存在がまた素晴らしいのですが,すでにかなりのキャリアを積んでいる俳優とのこと。将来も楽しみです。子育て中の親には学ぶことたっぷりだし,そもそもの人間関係において,じっくりと相手の話を聞き,しっかりと自分のことを話す。この基本でいてなかなか実行できない当たり前のことを意識させてくれる作品。
https://happinet-phantom.com/cmoncmon/

 

2022年429日(金)

立川シネマシティ 『パリ13区』
二日連続でモノクロ映画を観ることになりました。たまたま,場所と時間からなんとなく選んだ映画でしたが,なかなか面白かったです。原題は「Les Olympiades(レ・ゾランピアード)」といいますが,映画の舞台となっている地名。「オリンピアード」とはオリンピックが開催される間の期間4年間を意味します。まあ,それはともかくパリといえば,高層建築物に対する規制があり,古い建築物を活かして中身をリフォームするということで有名ですが,この地区は映画でも描かれるように,高層マンションが林立しています。そして,主要登場人物の一人の女性は台湾系のフランス人です。主要登場人物の男性が黒人なのはフランス映画では珍しくありませんが,中華食材を売るスーパーや中国系が働く中華料理屋なども多く登場します。そうしたこの地区の特徴が描かれているのもこの作品の魅力です。原作はいくつかの短編作品をつなぎ合わせているようで,ストーリー的にもとても面白い。
https://longride.jp/paris13/

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【映画日記】『アネット』『映画クレヨンしんちゃん』『劇場版Free!』

2022年48日(金)

立川シネマシティ 『アネット』
私のTwitter空間では絶賛する人が多かった,レオス・カラックス監督の最新作。アダム・ドライバーという勢いのある俳優を主人公に据え,久し振りのマリオン・コティヤールが相手役。カラックスはフランス人監督で,マリオンもフランス人だが,前編英語での上映。確かに,グイグイとスクリーンから迫ってくる作品。でも,私にはイマイチのれなかった。まず,男女の恋愛ものを素直に楽しめなくなった自分がいることに今回も気づかされる。それは特に,若い初恋に近いときめきは分からないが,成熟した大人の恋愛というものに自分を投影できない。それは昨今のジェンダー平等や性的マイノリティの議論への同調とも歩調を合わせているのかもしれない。私自身が今(家族の存在は無視して)新しい恋愛をできるかと言われたら自信がない。
以下はネタバレになりますが,そもそも,作品の中でこの二人が愛し合わなければならない状況は描かれていなかったし,主人公ヘンリーの舞台は全く私には笑えるものではなかった。とはいえ,本作のタイトルは二人の子どもの名前であり,このアネットの演出には目を見張るものがあった。それは赤ちゃんの時点から木製の人形を使っていて,それが動き,また成長するのだ。最後の場面で少しだけ生身の人間が演じる場面があるが,この存在はこの映画の最大の見せ場ともいっていい。
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2022年423日(土)

府中TOHOシネマズ 『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』
子ども2人と観に行った。長男は小学六年生になったが,いつまでしんちゃん映画を観続けてくれるか。アンパンマンとは違ってしんちゃんは大人でも十分楽しめるので,いわば本人がしんちゃんの映画を観に映画館に行く(あるいは父親や妹と一緒に行く)という行為を恥ずかしがらずにいられるかというところだ。息子はその辺りの感覚はそれなりに持っているようなので(恥ずかしいという感覚に無頓着な人間もいるが,私はそういう人を羨ましく思う),今年が最後かもしれない。
本作はしんちゃんが極限まで頑張るという映画特有のしんちゃん像はなく,いつも通りのちゃらんぽらんなしんちゃんだったので,安心して観られた(とはいえ,今回はみさえが頑張っています)。私も毎年楽しみにしていて,なるべく多くの作品を子どもたちと観続けたい。そのうち娘も父親と一緒に映画館に行くのは恥ずかしくなって,家で動画サービスで観るようになるかもしれないが。
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2022年424日(日)

府中TOHOシネマズ 『劇場版Free! the Final Stroke後編』
娘はスイミングスクールを辞めてしまった。一段上のクラスになって,本格的に泳ぐ訓練に入り,かなりきつかったようだ。まあ,息継ぎの基礎になるような訓練はしてきたので,後は自力で泳げるようになるかもしれない。多摩市には比較的大きな室内プールがあるので,頻繁に連れて行こう。
ということで,水泳つながりで好きになった作品。映画館で観るのは最後の劇場版(?)になってしまったが,前編と後編と二作品楽しめた。とはいえ,終わり方が次回への続きを感じさせるものだったので,本作が最後かどうかは分からない。それにしても,最近はテレビアニメの総集編のようなアニメ映画も多いようだ。本作のアニメは断片的にしか観ていないので何とも言えないが,今回の劇場版もセリフのない回想シーンが多くて,テレビシリーズを観ていることを前提としているような演出が多かった。
その辺りは新参者としては不満が残るところだが,ストーリー的にはようやく主人公の七瀬 遥の心情に踏み込んでいくものでよかった。ずーっと見続けてきた人はその辺りのもやもやがたまっていたのだろう。とはいえ,映画としては一度エンドクレジットが流れ(しかも相当長い),その後も物語が続くという異例の展開。かなり疲れました。
http://iwatobi-sc.com/

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【読書日記】大串夏身『まちづくりと図書館』

大串夏身(2021):『まちづくりと図書館――人々が集い,活動し創造する図書館へ』青弓社,226p.2,400円.

 

著者は1948年の生まれで,東京都立図書館の勤務経験があり,図書館行政に携わり,最終的に昭和女子大学で教鞭をとったという経歴の持ち主。すでに同じ青弓社から『挑戦する図書館』(2015年),『図書館のこれまでとこれから』(2017年)を出しているとのこと。
もうずいぶん前のことになるが,会社の業務でとある空港のコンセッション業務(民営化)のお手伝いをしていた。結局私が務める会社が関わっていたグループは運営権を獲得できなかった。そもそも,私の仕事は計画立案には関わらなかったから,私が密かに上げた案は守秘義務の対象にもならないと思うが,私は新しい空港のあり方として図書館機能があったらいいのではないかと提案したことがある(誰も私の案に触れることもなかった)。個人的に国内線の利用でも暇を持て余してしまう私にとって,空港に図書館があるというのは理想的だと思えたのだ。その考えは今も変わっていない。
本書はそんな感じで,図書館をまちづくりの中心に据えるという提案をしているものと期待される。

第1章 まちづくりと図書館の関係
第2章 まちづくり,中心市街地活性化事業と図書館
第3章 基本計画に見る図書館のサービス・事業
第4章 図書館関係事業の評価
第5章 まちづくりから「成熟社会」のなかの図書館へ
第6章 人々が集い,活動し創造する図書館へ

しかし,実際に読んでみると,著者に確たる哲学があって,そのことを論述するような本ではなかった。ともかく,全国の事例に詳しく,こんなところではこんな取り組みがあるということを紹介している。ただ,やみくもに事例を重ねるだけでなく,日本全国を網羅的に整理しているところが,本書を読み物としてではなく,読者が図書館について具体的に今後の方策を考える際の素材を提供してくれているところに本書の魅力がある。
第2章のタイトルにもあるように,まず第1章でこれまで日本ではまちづくりの中核に図書館を据えるという発想がほとんどなかったという。それを前提に,第2章ではまちづくりの基本的なものである,全国の中心市街地活性事業をとりあげ,そのデータベースからその事業に図書館が含まれるものをピックアップしている。こういう作業はとても重要で,今自治体が取り組もうとしていることを確認し,その上で今後さらに取り組むべき課題を見出していくことができる。さらに,図書館をまちづくりに含む事業から,その図書館の位置付けを把握し,図書館を中心に据えている数少ない事例を詳しく紹介している。
なお,私にとって図書館関係の本は本書で二冊目であり,一冊目が先日紹介した前川恒雄『移動図書館ひまわり号』だった。前川氏は公共図書館のあり方を,ともかく市民が必要とする書籍の提供に徹するべきと主張し,1960年代以降の日本における公共図書館のあり方を変えた人物だといえる。その前川氏の考えと彼の影響下で進んでいった日本における公共図書館のあり方に疑義を呈しているともいえる。前川氏は図書館内に閲覧スペースはいらないといったが,本書では図書館はともかく人が集う場所であるという考えがある。そして,読書の体験における個人を強調した前川氏に対し,本書の著者はそれを否定しないながらも,書籍が取り結ぶ人間関係を強調している。もちろんそうした考え方は,ある程度自治体の人口増加現象であった前川氏の時代と,コミュニティが人口減少によって弱体化しつつある現代とで大きな違いがあるとはいえる。
ともかく,図書館は確かに前川氏のいうように,本来図書館が有する最低限の機能に多くの力を費やして充実させることが必要だと思います。それを蔑ろにして人が集まる機能を云々いうのは本末転倒という気がします。しかし,最低限の機能が充実したその先には,さらなる役割を図書館に担わせるという,本書の主張にも賛成します。よく「地域活性化」(本書の場合にはそこまで大げさではなく「中心市街地活性化」程度ですが)といいますが,それを担うのは商業施設だけでなくてもよく,そこに図書館があったらいいと,読書に大きな価値を見出すような私は思います。しかし,一般的にはそういう人ばかりではありません。ここが重要なんですよね。社会一般では読書をする人の方が云々いうわけですが,実際には読書なんてしない人もいっぱいいる。かれらの存在をどうとらえるのか。個人的には読書といっても,読む本のジャンルでそこには多様性があるわけですが,それでもやはり本から得られる豊かさというものを私は信じたい。読書好きな人が増えればそこそこ良い社会は実現するなんてことを考えたりもします。しかし,一方では読書なんてしないという権利もあると思う。やはり現代社会は一つの価値観で個人の行動を制限することはできない。とはいえ,図書館という存在が読書好きな人を増やしていくという役割を担うことは問題ないだろう。

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吉原直樹(2018):『都市社会学――歴史・思想・コミュニティ』東京大学出版会,297+25p.3,200円.

 

私はその人生を都市で生活してきた。自ずから地理学者として手掛けてきたのはほとんど都市に関する研究である。ということもあり,都市に関する著作を読むことは多かったが,自分の専門分野を都市地理学として意識したことはそれほどなかった。一時期,関東都市学会に関わっていた頃は,かなり都市を意識したし,その学会自体は社会学の人が多かったこともあり,都市社会学について考えていた時期もある。
数年前からオリンピックの共同研究に加わり,多様なオリンピックに対して地理学的にアプローチすることを考えた時に,やはり都市論的なものが明確に立ち現れてきた。2020年に国内外のレビュー論文を二本書いたが,当初はオリンピックの地理学的研究を都市論の系譜で整理することを想定していた。しかし,実際にオリンピック研究を読んでみると,そうした総論的な都市論の系譜に明確に位置付けられるものは多くないことに気づいた。
とはいえ,その際に多くの著名な都市論を読むこととなった。というよりは,これまで私が読んできた都市論があまりにも断片的なものであることに気づいたのだ。オリンピック研究を都市論の系譜に位置づけるという構想はまだ完全に捨てたわけではなく,少し長期的に考えてみようと思っている。そんななかで,本書は日本の代表的な社会学者による著作ということで,町村敬志『都市に聴け』についで読んでみようと思った次第。吉原さんについては,本書にも出てくるハーヴェイやアーリの監訳者として馴染みはあったが,実は彼自身の文章はあまり読んでこなかったし,単著としては初めて手にするものだった。

序 都市を社会学的に問うということ
Ⅰ 都市社会学の系譜
1章 都市社会学の原点――シカゴ学派の世界
2
章 都市社会学の展開――サバーバニズム論とアメリカン・ドリーム
3
章 都市社会学の理論的危機――カステル「都市イデオロギー」論の挑戦
4
章 「新しい都市社会学」の誕生――空間をとらえる視点
Ⅱ 都市社会学の理論的展開
5
章 移動と空間の社会学――ハーヴェイとアーリ
6
章 空間論的転回から移動論的転回へ――ジンメル都市論の再解読
7
章 都市論の射程――ルフェーヴルの「都市的なるもの」
8
章 コミュニティ論再考――新しいコミュニティのかたち
Ⅲ 現代都市の課題をさぐる
9
章 「遠くて近い」東南アジアの都市
10
章 セキュリティ都市――安全神話の崩壊と監視社会化
11
章 グローバル・ツーリズムとコミュニティ――「開いて守る」コミュニティとは
むすび――21世紀都市社会学のゆくえ

「あとがき」の冒頭に「筆者がかけだしの頃」という話が書かれている。指導教官からルフェーヴルを強く紹介され,読み始めたという。そこから,カステル,ハーヴェイと進み,最近ではアーリを積極的に翻訳してきた著者。この世代の都市社会学者がシカゴ学派を踏まえておく必要があるのは当然だが,本書で語られる都市社会学の系譜が時代とともに著者が歩んできた軌跡だということを実感した。
私自身はアーリという社会学者に対して,その出世作である『観光のまなざし』には少し懐疑的だったし,場所研究者としては強く期待をした『場所を消費する』が私が期待した方向性とは少し違うことを感じ,それからは読まなくなってしまった。しかし,本書で『グローバルな複雑性』がウォーラーステインと同様に,複雑系のシステム論に影響を受けたものだと知り,また『モビリティーズ』についても理解を深めることができた。また,アーリを通じてだが,近年の社会学者が今あえてジンメルを再評価していることなど,都市社会学のダイナミックな展開を実感できる読書だった。
しかし,なぜか著書の文体はしっくりくるものではなく,なぜこれまで私が積極的に彼の著書を読んでこなかったのか,感覚としてそうしてきたのかもしれないと思ったり。ただ,最後の提言である「開いて守るコミュニティ」というのは,多くの社会学者が近年の動向に対して,これからの社会の歩む道として示しているものと軸を一にしているので,さまざまな研究者の視点から,これからの社会の在り方を模索していきたいと思う。

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【読書日記】前川恒雄『移動図書館ひまわり号』

前川恒雄(2016):『移動図書館ひまわり号』夏葉社,253p.2,000円.

 

私が手にしているのは復刊されたもので,元々は筑摩書房から1988年に出版されている。ひまわり号とは今も日野市で行われているサービスでその名の通りバスに図書館の本を積んで巡回するものである。その歴史的存在は市役所などでも知ることができるし,有川 浩の『図書館戦争』を原作とした映画を観た時も,日野市の図書館行政がモデルとなったことを知った。本書についてもそんなことでどこかで知っていた気がする。先日,十年以上ぶりに青山ブックセンターの本店(もう支店はないのかな)に行った時,買いたい本は山ほどあったが,本書はここでまた見て見ぬふりをしたら読む機会が遠のいてしまうと思い購入。

図書館を求めて
日野にゆく
「ひまわり号」出発
市民のなかへ
市民と図書館
試練をこえて
東京から日本へ
新しい飛躍

読み終えて愕然とした。もちろん,本書が言うところの公立図書館革命の当事者である人物の視点に立った歴史物語であり,また自分の功績を誇示しているわけではないが,自分の考えを強く主張する人でないとここまでのことはできない,という意味では本書の記述は実直でもある。それはともかく,この本は1960年に著者が図書館協会の職員になるところから始まる。その時代の様子,日野市に移った頃の日野の様子,公共図書館の状況,都政のことなどさまざまな側面で学ぶことが多い。
著者は1960年当時,石川県の七尾市立図書館の司書であったというが,有山 崧という図書館協会の事務局長からの誘いで職員として上京したという。有山は日野市の地主で代々日野町長を務める家系であったということで,当時市立図書館のなかった日野市で新しい図書館行政を始めることになった。有山が日野市長となり,その下で著者が図書館のあり方を模索したという。当時の公立図書館は閲覧室で学生たちが勉学に励む施設であり,図書を貸し出すという機能をほとんど果たしていなかったという。そこで,日野市ではそうした施設を作る前に,図書の貸し借りという業務から始めるために,バスを購入し移動図書館を始めた。その名前は「日野を回る」ということから,「ひまわり号」と名付けられた。
著者と市長の存在により,日野市には当時としてはありえないような500万円という図書館費を計上し,とにかく新しい本を増やし,市民からのリクエストにも応えるという形で事業が展開した。当時は多摩地方にもいくつかあった都立図書館からの移動図書館が日野にきていたという。ある貸出しポイントに数冊の本を預け,市民はそこに借りに行くようなシステムはほとんど機能していなかったという。
日野市には団地が多いが,次にやったことは都営鉄道の古い車両を買い上げ,それを団地の敷地に設置した子ども図書館を作ることだった。今は再開発の進む多摩平にあったそうだ。しかも,老朽化した鉄道車両の代わりに新たな子ども図書館を建物として建設もしたらしい。現存するところではその後できた高幡図書館があるが,これもなかなか面白い建築物だ。日野市では過去の教訓から閲覧室を設けずに図書館を建設している。確かに,高幡図書館には閲覧室がない。いくつかの分館が機能して,ついに中央図書館を建設することになった。後半に中央図書館建設にまつわる顛末がかなりのページを割いて書かれている。当時,図書館建設で有名になっていた鬼頭 梓という建築家が設計することになるのだが,なんとこの人物は私が非常勤講師として通っている東京経済大学の(旧)図書館を設計した人物だという。今は新しい図書館ができてしまったが,古い建物は結局反対意見が多く解体はされず,創始者の記念館として存続している。私も結構利用したが,確かに言い建築物である。そうして,19732月に日野市立中央図書館は竣工した。この建物は私もまだ一度しかいっていない。本書のなかでは市民のアクセスが良い場所ということで選ばれているが,けっしてわかりやすい場所にはないが,今となってはそのことがひっそりと佇む独自の雰囲気を醸し出しているようにも思う。ともかく,近いうちに行かねばならない。
いろいろ説明もしたくなるが,日本の公共図書館をテーマにした地理学研究も面白いなと思った次第。私も東京に住むようになって,調布市,府中市,日野市と市立図書館にはお世話になっている。子育ての各段階で,利用していたが,どこも子どもの図書は充実していて,また子どもが過ごしやすいように設計されている。閲覧室は調布にも府中にもあり,また日野では恐らく新しい方の百草図書館にもある。とはいえ,本書のはじめの方に書かれているような,閲覧室を求めて学生たちが行列するような状況ではない。
といいながら,日野市の行政もその頃とは変わっているし,それに伴って図書館行政も変化しているものと思われる。とはいっても,私が接している図書館の職員さんはとても丁寧できちんとした仕事をしてくれている。本書に書かれている状況から,現在はどうなのか,その辺も調べられる機会があったら調べてみたい。

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【読書日記】松田隆美編『旅の書物/旅する書物』

松田隆美編(2015):『旅の書物/旅する書物』慶応義塾大学出版会,209+20p.3,000円.

 

古書店で購入したもの。慶応義塾大学出版会の書籍を購入するのは初めて。旅行記や旅行文学の研究を少しずつ集めています。本書は書物自体の旅(移動)も含むものとして期待したい。寄稿者のほとんどが慶應義塾大学関係者ということで,平成26年度の講座「文献学の世界――旅の書物/旅する書物」として,12人が登壇したということで,講座のコーディネーターとしてはこの論文集には関わっていない徳永聡子という人の名前もある。12回のうち9回の内容が収録されたことになる。

前言:松田隆美
Ⅰ 探書と旅
旅と文献情報の収集――16世紀コンラート・ゲスナーの場合:雪嶋宏一
「よりよいテクスト」探索の旅――サー・トマス・マロリー『アーサーの死』をめぐる数奇な出版事情と編集者たち:不破有里
Ⅱ 旅の記録と旅の実際
2つのローマ――「旅の書」にアイデンティティの上書き利用を読む:神崎忠昭
旅の書物/旅する書物――近代イギリスのイタリア旅行記とガイドブック:松田隆美
イブン・バットゥータの上エジプト旅行――喜捨と歓待をめぐる一考察:長谷部史彦
「通信使記録」からみた使節団の庶民芸能見物:田代和生
Ⅲ フィクションと旅
フィリップ・ド・シャンパーニュ作,通称《煉獄の魂》再考――「勝利するキリスト」図像の視点から:木村三郎
『ガリヴァー旅行記』をめぐる東西文献交渉史:原田範行
中国古典文学に見る雅と俗の「旅」:吉永壮介

『旅するジーンズと16歳の夏』という面白い映画があった。また,地理学でも風景を描いた物質的な作品が移動するという事態を論じた英語論文もあったが,本書でも旅が書物の記述内容になるというだけでなく,例えば旅行のガイドブックが旅先に携帯されるように,書物自体が時空を超えて移動する事態を問題としている。よって,文学研究という枠組みよりも文献学という枠組みが中心となっている。その場合,単一の物理的存在としての書物というだけでなく,特定の書物の内容や形式が時代を超えて場所から場所へと伝播していく,そんな内容も含んでいる。ただ,全体的に連続講義の一回という制約から,ページ数は多くなく,十分な考察によって結論にたどり着いているものは多くなく,話題提供程度の文章もある。とはいえ,ヨーロッパを中心としているものの,イスラム世界や日本,中国,朝鮮といった東アジアの話題もあり,興味深い論集であることは間違いない。以下,各章ごとに簡単な解説と感想を書きたい。
「旅と文献情報の収集」はスイスのコンラート・ゲスナー(1516-1565)という人物が残した,文献情報の成果として刊行した書籍ができるまでの経緯を辿ったもの。本書では「訪書旅行」とされているが,ゲスナーは「図書館や印刷業者を訪ねて文献情報を収集する」(p.13)人生を送ったという。本職は博物学者ということで,文献に関しても学問体系を踏襲した文献の分類体系を構築したという。これこそ文献学という内容で,本書の冒頭にふさわしい。
「「よりよいテクスト」探索の旅」は「ブリテン島に伝わるアーサー王をめぐる物語」(p.40)と説明される「アーサー王物語」であり,具体的にはサー・トーマス・マロリーの『アーサーの死』(1485年)をめぐる歴史を辿ったもの。後の時代の人たちが,遠い過去の作品を再現して復刊する時,どのような想いで,どのような史料に基づいて再現するのか,まさに本の歴史的旅を辿る論文。
「2つのローマ」は地理学的に興味深いテーマを扱っているのだが,私にはほとんど理解できなかった。それはイタリア史に関する知識が乏しいこともあるが,そうした人向けに親切には書かれていないということもあろう。
「旅の書物/旅する書物」は編者による文章で,さすがという感じ。中世の巡礼案内に始まって,近代の旅行案内書につながる系譜を,これまで私が知らなかった形で辿ってくれる。もう少しじっくりと読みたい感じ。
「イブン・バットゥータの上エジプト旅行」は本書の目次を見て楽しみにしていた章。バットゥータをいつ知ったのかはよく覚えていないが,アブー=ルゴド『ヨーロッパ覇権以前』だと思う。1304年のモロッコ生まれとあり,「その人生の大半をかけたイスラーム世界内外の大旅行」(p.135)とあり,その旅行記は平凡社の東洋文庫に家島彦一が訳しており,自身の研究書もある,というところまでは知っていたが,それらをまだ読んだことはない。本章はその翻訳されているものに先だつ上エジプト紀行を考察したもの。この頃のエジプトについては『ヨーロッパ覇権以前』にも記述があるので,いろいろと興味がわく。
「「通信使記録」からみた使節団の庶民芸能見物」は鎖国時代に日本を訪れていた韓国通信使による江戸文化の記録を紹介している。決して親切な論文とはいえないが,史実として想像することもできない事柄であり,知ることができただけでありがたい。
「フィリップ・ド・シャンパーニュ作,通称《煉獄の魂》再考」は本書で唯一の図像分析。キリストの絵画表現をめぐるもので,面白い。
「『ガリヴァー旅行記』をめぐる東西文献交渉史」はジョナサン・スウィフト『ガリヴァー旅行記』について,私も非常勤先の授業で扱っていることもあり,そこそこ文献は読んでいたが,日本での受容史を論じていて興味深い。『ガリヴァー旅行記』が日本に伝えられて,それに似た文学作品が日本で生まれるとつい考えてしまう(文化の伝播においてヨーロッパを優位に考える)。しかし,この論文は,『ガリヴァー旅行記』に唯一の実在する場所として日本が登場するということを手掛かりに,逆の思考をし,日本にかつてあった文学作品が(今は残されていないが)イギリスに渡って,『ガリヴァー旅行記』に影響を与えた可能性を探求している。
「中国古典文学に見る雅と俗の「旅」」は,ここまで横書きで進んできた本書で,裏表紙から縦書きで印刷されている。「旅」という言葉について素朴に問い直すことから始め,中国語の「旅」について考察する。これもこれまでのツーリズム研究では全くなかった議論で興味深い。後半では『西遊記』と『三国志』の地名と地理との関係を論じている。地理学的に興味深いが残念ながらきちんと理解できなかった。いくつも読みやすそうな参考文献も示されていて,中野美代子さんの『西遊記』論もあるようだから,機会があれば読んでみたい。

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【映画日記】『映画おしりたんてい』『牛久』

2022年319日(土)

府中TOHOシネマズ 『映画おしりたんてい シリアーティ』
おしりたんていは子どもたちが前から好きで,映画版は『東映まんがまつり』の一作品として始まった当初から観てきた。今回は満を持しての単独上映。とはいえ,おしりたんていの短編との同時上映。今回の敵「シリアーティ」は女性もののパンティらしき覆面を被った,顔はおしりたんていによく似た人物で,女性かと思いきや,福山雅治が声優を務める。これまでも宿敵として怪盗Uという存在がいたが,それに加わりそうな存在感。でも,毎回福山さんに声優をお願いするというのはハードルが高いかも。ストーリーもいつものクオリティで安心する。過度に豪華になるわけでなく,かといって貧弱でもなく。子どもの目線で長く続きそうな気がします。とはいえ,実際の子どもたちは成長していくわけですから,観客は次々入れ替わっていくのかもしれません。でも,幼い子ども心の記憶に残るものであれば,成長したかれらが懐かしんで最新映画を眺める,そんなのもいいかもしれません。
https://oshiri-movie.com/

 

2022年41日(金)

新年度に入り,会社の仕事も年度末を終え,一息ついたようなので,久し振りに有給休暇をもらって,一人で渋谷の街に繰り出しました。街歩きの楽しみをそれなりに知っているつもりですが,最近はその楽しみが随分一般化してしまい,逆にその楽しみを批判的に考えるようになってしまった。とはいえ,すっかり遠のいた渋谷の街を久し振りに訪れるという行為は,かつての自分の街の記憶との「今昔マップ」をリアルで行うという楽しみを発見する。
イメージフォーラムに行くのはそれこそ10年ぶりぐらい。この日は近くの青山学院大学で入学式があったようだ。この大学は一度だけ日本地理学会の大会で足を運んだことがある。確か,午前中は会社で勤務をしていて,ネクタイはしていなかったものの,私にしては珍しくワイシャツ姿で発表した記憶がある。
少しだけ時間があったので青山ブックセンターにも立ち寄る。最近は近所の書店もそれぞれ個性的な品ぞろえで楽しめるし,立川のジュンク堂もそこそこ大きいし,いくつか個性的な独立系書店もあったりして,都心に出かけなくても楽しめますが,やはり青山ブックセンターは格別。ほんの15分くらいの滞在でしたが,できれば一日中居たいと思える空間でした。

シアター・イメージ・フォーラム 『牛久』
観た映画はこちら。私の研究者仲間が数人こぞって観に行ったというもの。そのうちの一人はこの作品の対象になった牛久にある「東日本入国管理センター」に収容されている外国人を支援する団体でボランティアをしながら調査・研究をしている人がいて,先日も学会でそのことを報告しており,その実態についてはそこそこ知識があった。ここに収容されている人たちは難民として日本にたどり着いた人。ご存知の通り日本の難民認定は厳しく,認定されない人々は日本にいくつかある,いわゆる「収容所」での不自由な生活を余儀なくされる。名古屋ではスリランカ人女性ウィシュマさんが適切な治療を受けられずに亡くなった事件は大きく報道されている。この施設から外に出るためには仮放免の許可を得なければならないが,数ヶ月や数週間,外の世界に出られたとしても移動は制限され,就労はできない。要は誰かに保護されないかぎり生活はできない。難民として逃れた人であるから日本社会に頼れる知人がいるわけでもない。そこで,おそらく支援団体がかれらを支えているのだろう。
この映画は監督が隠しカメラを持ち込んで撮影していたことが話題になった。実際に見てみると,面接の様子が動画と音声で記録されているという以上の事実はない。それだけのことが門外不出にされているという事実が恐ろしい。この映画での衝撃的な映像は監督が撮影したものではなく,収容されている人が職員から受けた暴力に関して訴える際に弁護士が施設に要求して得たものであり,撮影者は施設の職員である。かれらは訴えられた時のために映像を残している。かれらとしてはその映像をもって自分たちがひどいことはしていない証明をしているつもりなのだが,この映像自体がすでに非人道的である。一人の人間を67人の職員が押さえつけ,「暴れるな!」と怒鳴りつけながら「制圧!」と叫びながらそれを実行する。まさに,警察が犯罪者に対して行う行為だ(それであっても,人権に背く暴力行為であることは間違いない)。また,収容されている人々は仮放免の許可すら出ない状況を訴えるために,ハンガー・ストライキをする。数日程度かと思いきや数十日に及ぶもので,職員も根負けして仮放免を与える。この映画が撮影されていた頃は期間が2週間だったそうだ。映画に登場する人たちには,ハンガー・ストライキのせいで体調を崩す人,制圧行為によって車いす生活になる人,とにかく本当にひどい人権侵害の現場を観る人は目撃することになる。そのなかの一人は自殺未遂を図り,監督がその人を救うために国会議員を動かす。その国会議員は石川大我という立憲民主党の参議院議員だが,その国会での質問の様子も映画では流れる。ここも一つの山場ですね。しかし,この質問によって状況が変わったわけではないのはウィシュマさんの件で分かる。その後,大量に仮放免でかれらが施設外に出されることになるが,それはコロナの感染拡大によるものである。
その後のことが気になるが,さらに気になるのは,今ちょうどウクライナからの難民を受け入れていくという状況の中で,すでに難民として日本にいる外国人たちの処遇がどうなるかということである。普通に考えれば,後から来たウクライナの人々よりもすでにひどい処遇で生殺しされている人たちの処遇改善が優先されるべきだと思うが,そうはならないだろうという想定もできる。私には見守ることしかできないが,可能な限り声を上げていきたいと思う。
https://www.ushikufilm.com/

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【読書日記】松田青子『おばちゃんたちのいるところ』

松田青子(2019):『おばちゃんたちのいるところ』中央公論新社,261p.640円.

 

私が読んだのは中公文庫版。単行本化されたのは2016年12月とのこと。本書の英訳が世界幻想文学大賞(短編集部門)を受賞したとのこと。久しぶりに文学作品を読みました。子どもたちも小学1年生と5年生となり,一緒に電車に出かけても,各々の本を読むことができるようになった。5年生の息子が乗り物酔いをすることもあり,これまではなかなか難しかったのだが,最近は少し慣れてきたというのと,自分で調整できるようになった。3人で川崎水族館に行くときに,私も読みかけの本を持って行ったのだが,往路で読み終えてしまい,帰りに娘の分も含めて買うことにした。
フェミニズム雑誌『エトセトラ』は以前からこちらで紹介しているが,そこに毎号エッセイを書いているのが松田青子。気になっていたので,書店に行くたびにどの本から読もうかと考えていたのだが,川崎の有隣堂に在庫があったのが本書だけだったので,とりあえず読むことにした

みがきをかける
牡丹柄の灯籠
ひなちゃん
悋気しい
おばちゃんたちのいるところ
愛してた
クズハの一生
彼女ができること
燃えているのは心
私のスーパーパワー
最後のお迎え
「チーム・更科」
休戦日
楽しそう
エノキの一生
菊枝の青春
下りない
解説:あいまいなまま,でもなかったことにしないで「いる」ために:はらだ有彩

体裁としては短編集である。日本の長編小説の多くには目次はついていないし,基本的には連続的に展開するのが長編である。しかし,私の読んだところではミラン・クンデラなどは章ごとにジャンルを変える(ある章は一般的な小説,ある章は批評,またノンフィクション的)ものもあるので,本書は単純な短編集とはいえない。登場人物は章をまたいで出てくるし,はらだ有彩の解説や,その前のページに示されているように,各章にはモチーフとなる落語や歌舞伎,民話や戯曲などが示されている。タイトルは絵本『かいじゅうたちのいるところ』からきている。
各章におばちゃんが必ず出てくるわけではなく,目次に書いたように1つの章のタイトルである。ただし,基本的に四谷怪談のように,女性の幽霊が出てくるというのが共通している。もちろん,各章を独立した短編として,モチーフの古典を意識せずとも現代的感覚で楽しめる。私の今回の読書はまさにそうしたものだったが,後半はちょっとその読み方では迷子になりそうな場面もあった。そういう意味では,そのモチーフの作品を知った上で読むという楽しみ方もできる。また,各章で共通する人物や組織の見取り図を描きながら,読むという楽しみもできるだろう。確かに,この作品が外国で評価されるというのも何となくわかる。ともかく行間からにじみ出る作者の才能に嫉妬せずにはおれない読書体験だった。

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